コラム
近未来の精神科医療~①医療政策編~
吉村健佑(千葉大学病院)、精神科医・産業医、評議員
本コラムの発案でもある「広報委員」から筆を執り始めます。自己紹介。私はやや、遅めに医学部を卒業し千葉県で精神科臨床・産業医を経験しました。その後、厚生労働省(当時の私の職員経験からは、やや濃い目のグレー企業)へ3年間の出向を経て、現在は大学病院で教員をやりながら、県庁で政策立案を少ししています。表記題名としてみたのですが、この不確実な時代、未来なんか全然見通せないよねぇ、ということですが、「勘」に任せて記載してみます。
現在精神科医療には、いくつか特徴と課題があります。まず入院に関しては、在院日数が長く、病床数も依然として多い状況です。特に急性期の入院患者数は増加傾向にありますが、慢性期の患者数は減少し、病床の回転が早まりつつあります。都道府県ごとに数値目標が設定され、早期退院が求められています。精神科医の数や病床数については全体に「西高東低」という地域偏在が続いており、これが医療提供の偏り(過剰や不足)を生む要因になっています。
これらの課題に対処するためには、近未来(だいたい2040年くらいまでの15年間)で①医療政策による解決(合意形成)と、②デジタルテクノロジーの活用(DX)が必要です。政策的にはまず精神科医の働き方改革も重要であり、特に総合病院や精神科救急での時間外労働に注意が必要です。勤務時間の上限規制から、各病院は「宿日直許可」を取ることが最適解になり、精神科救急の機能低下が懸念されます。その階として、精神科病院の集約や統合も進むと考えます。精神科医がここ15年で25%と大きく増えている中、専門医制度では東京のみならず石川・岡山・福岡・佐賀・熊本・沖縄都などで「シーリング(専攻医の上限規制)」が行われ、精神科医師の配置について規制が強化されています。今後はそこでの精神科医の診療実績・総量もモニタリング対象になりそうです。
現在すでにある、精神科オンライン診療の普及は加速されます。限られた資源で持続可能な精神科医療を実現するためには、患者さんの交通整理(フリーアクセスの部分制限)も必要になります。「約15,000人」しかいない精神科医が効率よく機能するように、タスクシフトも進み、効果の高い診療行為に注力する場面が増えます。これまで通りの診療では立ち行きません。外来では「①生身の」「②精神科医が」「③頻回」に診療を行うスタイルから「①オンラインなどでも」「②医師以外の専門職が」「④必要最小限の頻度で」診療することに形が変わります。さて、私を含めて今後の精神科医自身がどうなるか?続きは「近未来の精神科医療~②医療DX編~」として記載しますので今回はここまで(あっという間の1000字でした)。