コラム
ネコ好きが語るネコと文化適応

「ネコはかわいく、そして尊い存在」。このフレーズに賛同してくれる方は多いのではないでしょうか?さて、以前のコラム(https://jssp-info.jp/column/column-005/)で、ネコと人間とのかかわりは古く、約1万年前からのお付き合いがあるとご紹介しましたが(1)、最近立て続けにイエネコに関する従来の知見を覆す研究結果が発表されています。具体的には、ヨーロッパでイエネコが普及したのは2000年前あたりからとされ(2)、中国でイエネコが普及したのは1400年前に中東の商人が持ち込んで以降と紹介されています(3)。ネコの起源や最新の学術情報を知りたい方には、ナショナル・ジオグラフィックのウェブサイトを閲覧することも興味深く、お勧めです(4)。
イエネコの起源が1万年前でも、2000年前でも、1000年前でも、尊い存在であることに変わりないネコたちですが、最近のトルコの研究は、ネコが人間文化に合わせて挨拶の方法を変えている可能性を発表しています(5)。特に興味深い結果は、ネコは女性の飼い主と比較して、男性の飼い主に対してより頻繁に声を発するコミュニケーションを使用していたという内容でした。著者らは、社会的性別役割において、男性は女性より言語行動を取ることが少ない傾向にあるトルコ文化が、この結果に関連している可能性を示しています。つまり、男性に自身(ネコ)のニーズに気づいてもらうために、ネコがより明確な発声コミュニケーションを頻繁に用いている可能性を提案しています。
このトルコの研究はサンプル数が少なく、ネコの挨拶行動に関する潜在的な知見を紹介しているにとどまりますが、気ままに生きていると思われがちなネコも、人間文化に適応した行動を取る可能性があることは驚きでした。精神医学や精神保健学の領域では、近年文化や環境要因を検証する研究が増えており、多様な文化・社会環境が人間のメンタルヘルスや行動様式に影響することを明らかにしています(6)。古代ギリシアの哲学者アリストテレスの言葉に由来する「人間は社会的動物である」という格言からわかるとおり、人間は否応なく社会や文化への適応を求められることがありますが、ネコの文化適応の知見を鑑みると、「ネコも社会的動物」なのかもしれません。
とはいえ、そんな小難しいことはどうでもよくて、「ネコはとくかくかわいい!」という人も多いと思います。私もそんな中の一人です。なので、今からネコと一緒にモフモフしてこようと思います。
国立精神・神経医療研究センター
精神保健福祉士、理事
山口創生
1. 鳥影者. https://www.choeisha.com/column/column06.html.
2. De Martino M. Science, 2025. https://doi.org/doi:10.1126/science.adt2642
3. Han Y. Cell Genomics, 2025. https://doi.org/10.1016/j.xgen.2025.101099
4. 日経ナショナルジオグラフィック. 2025. https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/25/120100657/?P=2.
5. Demirbaş YS. Ethology, 2025. https://doi.org/10.1111/eth.70033
6. Kirkbride JB. World Psychiatry, 2024. https://doi.org/10.1002/wps.21160