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covid-19

「自粛下の軽躁患者の葛藤」

はじめまして。
双極性障害歴、約十年の小説家、朝田小夏と申します。

新型コロナウイルスの流行が始まって早、数ヶ月。

テレビの画面の向こう側の出来事とばかり思っていたことが、今は双極性障害の当事者である私の生活を脅かし始めています。

五月晴れ日、青い空を見て、どうして自粛などできましょうか。躁状態にある人には苦痛でしかありません。

普段、私は、週の何日か小説をカフェで書いたり、図書館で資料を読んだりと、多くの時間を家の外で過ごします。しかし、今はそれをすべて家でしなければなりません。仕事環境が変わるのは、私にとって大きなストレスです。鬱では引きこもれますが、躁では自制するのに、かなりの忍耐力が必要です。

仕事環境だけでなく、生活環境の変化もおこりました。家族が自粛で家にいるため、距離が近くなったのです。小さな物音や言動にいちいち苛立つようになりました。長期の自粛による体重増加や、先行きの見えない経済の状況もその苛立ちの要因の一つでしょう。移動手段は精神科の薬の薬を飲んでいるため公共交通機関となり、健康不安もつきまといます。

そして発散できないストレスを抱えた私が、行き着いた先がネット。

SNSやネット通販に張り付いて、疲れるほどの人間関係を築き、毎日、ストレス発散のため買い物をしてしまうのです。精神的、経済的に負担になって、ようやく止めるという悪循環を続けます。

そんな私ですが、実はSARS流行時に米国に留学していました。高熱と呼吸ができなくなるほどの咳が出て、大変、恐ろしかったです。経済的理由で、病院になかなか行かずに悪化しました。最終的に受診しましたが、酷い咳で数週間ほど寝込んだのを覚えています。あの時、苦しい思いをしたからこそ、今は自粛しなければという思いがあり、出かけたいという衝動をなんとか堪えています。

新型コロナウイルスは、多くの人の生活を一変しました。私たち双極性障害の患者は、その変化にまだついて行けていません。仕事や生活、経済的環境の変化は、病気を悪化させるトリガーです。私たちは、医療の支えや、家族、職場の理解を必要としています。しかし、患者のSOSの声はまだ小さく、届いていないのが現状です。

感染症の流行が、精神疾患と無関係ではなく、苦しむ患者がいることを知って頂きたいと思います。より多くのサポートが行き渡り、治療に専念できる環境が整うことを切に願うばかりです。

朝田小夏