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covid-19

「3密を避けつつ、心は親密に」

COVID-19と名付けられた正体不明のウィルスが、急激に感染拡大していくことの恐ろしさはひと山超えつつあるようです。この体験を通じて、私たちの日常は大きく変わりました。緊急事態宣言以降は一時休止しているデイケアや断酒会などの地域活動も増えています。日頃は、いかに人とつながるか、多くの人に接して多様な体験を積むことや、それによるストレスのかわし方を身に着けることが大事ですと強調してきました。しかし今回は、家に引きこもる必要性を利用者の方々にご理解いただかなければならず、医療者にとっても想定外の辛い体験です。

「不要不急の外出を控えてステイホーム」と言われますが、精神科治療は決して不要不急のものではありません。デイケアに通って、生活リズムを整えることで、心身の状態を維持している人は多数いらっしゃいます。感染拡大は阻止しなければなりませんが、社会的活動や仲間とのつながりも、心身の健康問題として等しく重要です。密閉・密集・密接の3密を避けるために、他人との間に1-2メートルのソーシャルディスタンス(social-distancing)を保とうというのは、あまり適切なコピーではありません。感染拡大予防のための2mの距離は身体的距離physical distanceです。コロナ禍はもはや感染症の問題を超え、経済、社会、そしてメンタルへルスの問題です。「3密を避けつつ、心は親密に」。人と人との心の距離(social distance)は縮めて、支え合う社会を実現することが大事です。

3密は、ヒトをはじめとする生き物にとって、とても基本的な欲求であり必須の関係性です。私たちは日常的に、大きな声で笑ったり、近くでささやいて励まし合ったり、ハグしたりハイタッチして認め合ったり、災害の後などつらい時には肩を寄せて耐え忍んできました。袖触れ合うも多生の縁と言って、近しく触れ合うことで、見知らぬ人とも新たなネットワークが生まれたものです。それが禁じられてしまっては、本音を出せる安心できる環境がなくなり、つながりを失い、孤立してしまいます。心の健康のためには、これらを避けなければなりません。これからは学校や職場、日常生活を支える様々な場における、二次的な被害との闘いが始まります。3密を避けながら、心の距離をいかに縮めるかという新しいつながり方の工夫が必要です。

こうした中で、私たちが大事にしていかなければならないものは何か、社会精神医学の視点から専門家のメッセージを発信いたします。

一般社団法人日本社会精神医学会
理事長 水野雅文